れいめいの思い

黎明幼稚園 園長  鈴木 一康
黎明幼稚園 園長 
鈴木 一康

幼児期からの心の教育とは?

文部科学省では幼稚園教育の内容を次のように定めています。

健康:健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う

人間関係:他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う

環境:周囲の様々な環境に好奇心や探求心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う

言葉:経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う

表現:感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする

この5つを「遊びをとおして育てる」ことを幼稚園教育の目的としています。

心の教育を大事にしております

今、社会はものすごい速さで変化しています。
わずか数十年前までは未来まで絶対不可能と思われた宇宙まで、私たち人類は生活の場を広げようとしています。
一方で携帯電話が子どもからお年寄りまで、全員に行き渡るようになりました。
このような文化をもたらしたのもみんな今までの教育のおかげですが、子どもの成長にはどんな影響を与えているのでしょうか。

子どもの成長の道筋は昔も今も不変ですが、子どもは社会の鏡と言われるように、物質的には大変恵まれた中にいながら、常に不満を漏らしイライラしているのはなぜでしょうか。

科学の発達は人類に大きな幸福をもたらしましたが、同時にたくさんの失ったものがあります。戦争によって失われる人々の命。加速度的に絶滅していく動植物。自然の荒廃。地球の温暖化・・・。
そして、その中で荒れた人々の心。

教育の発達が現代文明を造ったのですから、その反対もできるはずです。私たちが今考えたいのは「幼児期からの心の教育」です。

なぜかな?どうしてかな?を大切にしております

平成30年度より、学校の授業の内容や時間が大幅に増えました。
そのこと自体は大変良いことだと思いますが、すでに結論が出たことを「知識」として量だけ詰め込むことは、本当に理解したということになるのでしょうか。

「なぜかな」「どうしてかな」という考える過程が大切だと思います。

その「知りたい、やりたい」心をたくさん持っている子ほど、後に学習として教科書を通して学んだ時「ああ、そうか」と真に理解することが出来るのです。

来る学習の時期の前にたくさんの「なぜかな」「どうしてかな」という心を「遊びをとおして育てる」ことが幼稚園教育の目的なのです。

人と関わる力とは

周囲にお友だちがたくさんいるのに、自分の気に入った子としか遊ばない。積み木や粘土など工夫して遊ぶ楽しい遊び道具があっても、受け身に慣らされた子は自ら考えなければならないことには手を出しません。
しかし、友だちが出来て、友だちと遊ぶ楽しさを知ると、子どもの顔がイキイキとしてきます。さらに全身の動きが柔軟になってきます。
「心の開放」が子どもを変えるのです。

社会に参加するということは、それぞれの家庭内では許されたことが、時には社会の中では自分の思い通りにならないことがあるということを知ることなのです。
それを乗り越える心と体を作ることが大切なのです。

幼稚園生活のもっとも大切なことは「人と関わる力」をゆっくりと、そしてしっかりと身につけることだと思います。

大きな家庭のような幼稚園です

れいめい幼稚園は学校の小さいところではなく少し大きな家庭でありたいと考えております。

生まれて初めて所属する社会が学校のように大きなところだったら、どんなに不安を感じることでしょうか?
3歳児では、まだまだ家庭の温もりを求めているのです。
しかし、現行の幼稚園生活の4〜5時間でも、子どもは友だちと遊んだり、活動に参加したりするだけでも大きなエネルギーを消費しています。時にはストレスとなるほど子どもにとっては大変なことなのです。
そこで、私はこの園の雰囲気を限りなく、家庭的で温かい環境にすることにより、幼児の一日の全ての生活を考えながら子どもの心身の発達に過大な負担を強いることがないよう、常に「子どもにとって何が幸せか」を考えていきたいと思っています。

子どもの心を育てる環境を整えております

「環境が子どもの心を育てる」という言葉がありますがどんな環境が子どもの心を育てるのでしょうか?

今子どもが最も不足している経験は「自然の営みを直接的に体験する」ことだと思います。
新園舎建築の為に大幅に園庭の環境を整備してしまいましたが、れいめいの園庭には大きな樹木がたくさんあります。
桜は入園する春の喜びを飾ってくれて、ケヤキとイチョウの木は夏の暑い日に涼しい木陰を造ってくれます。また樹木のすべてが落葉樹ですから、四季折々の繊細な変化を子どもに語りかけてくれます。
これらの大木の他にもアンズや柿、バラや椿や山法師等たくさんの木々や花が命を大切にするれいめいの保育の象徴となっています。
今後も子どもの生活を見ながら再び整備していきたいと考えています。

また「環境」とは物ばかりではありません。
バスを使わない幼稚園として登降園の時、顔を合わせる親子同士の挨拶が、社会生活で一番大切なことを教えてくれます。
また、母親の愛情を伝えるためにもっとも大切な事として、毎日のお弁当をお願いしていますが、有志のお母さんによる「食育スープの日」には園内全体に家庭的な香りが漂います。
そして、同じく有志の方による「本読みママさんパパさん」の活動を通して、ギラギラとしたテレビによる映像からではなく、肉声による童話の世界にゆったりと浸かる、本当の子どもの目の輝きを見ることができます。

お母さん、お父さんも最も大切な環境のひとつなのです。
「人間の子として、一度しかない幼児期をゆったりと楽しみながら過ごして欲しい」というのが私たちの願いなのです。

父母の協力があるからこそ、この幼稚園の保育があるのです。

頭の良い子に育てるために大切なこと

どの子も最初は「なぜ?」「どうして?」を連発しますが、結論を先に教えてしまう行き過ぎた保育、指導を繰り返すうちに、意欲や好奇心の芽をいつの間にか摘み取ってしまいます。
やがて、子どもは身の回りの変化に興味を持たなくなります。

頭の良い子に育てるには「なぜ?」と聞かれたら「どうしてかな」と答え、援助は最小にとどめ、子どもの力で解決が出来るまでの十分ゆったりとした時間を保証したいと思います。

教科書を使い知識を身につけるのは、小学校へ行ってからで十分間に合います。
幼児期にはいろいろなものに興味や関心を持ち「なぜ、どうして?」を納得いくまで追求する態度と、友だちと十分関わりを持ち、遊ぶ力を身につけることが大切だと思います。
楽しくて楽しくてしょうがない幼児期を過ごすことにより、情緒の安定が図られ、次の学校教育を受ける土台となるのです。
「幼児期のふさわしい生活を、ゆっくりとしっかりと・・・」
これを私たちの合言葉にしております。

昼食はお弁当です

アレルギー、アトピー、さらに最近では輸入食材等の安全を確認した昼食は、お母様の手作りが一番と考え、れいめい幼稚園ではお弁当といたしました。
お弁当箱をあけた時の子どもの笑顔をお見せしたいです。

バス通園はございません

最近ではこの園の周囲では見られなかった、はるかに遠方の幼稚園の通園バスを見かけるようになりました。

自宅からかなり離れた所にある幼稚園まで、毎日往復何時間車内で過ごすのでしょうか。
そして保育中に発病した時や、万一大きな災害が起きた時には園に駆けつけることが出来るのでしょうか。
そして年々悪化する交通渋滞の中、やっと幼稚園に着いた時にはすでに早く着いた友だちは活動の最中で、気後れして仲間に入れないということもあるでしょう。

広範囲から集まってくる友だちは幼稚園の中では仲間でも、家に帰ったら地域の友だちとの触れ合いはありません。
通学区が決められた小学校では少数の仲間で生活に馴染めないという、小一プロブレムの遠因も案外こんなところにあるのかもしれません。